PETががん検診で使用されていないのはなぜですか?
さんPETががん検診で使用されていないのはなぜですか?
さん
PETおよびPET-CT検査は一度に全身にある癌(およそ1cm以上)を疑う病変に対して検出可能であり健診や癌の病期把握などに有用です。実際に自費でがん検診としてすでに用いられています。しかし、その費用は高額で約10万円前後というもので誰もが受けられるものではありません。高額な理由はいくつかあります。まずはPET装置が一台数十億であること。PET検査にあたって必要な製剤であるFDG(放射線であるγ線を一時的[精製後数日で検出は困難になります]に放出するように加工されたブドウ糖)の製造コスト(一本一万円以上)やその製造装置(サイクロトロン)が必要になります。その上、放射能物質を扱うために国の定める安全な施設が必要となります。
また、運用上の問題点もあります。生物学的に安全なFDGですが、まずは放射能物質を扱うため特定の医師による静脈注射を行い、その後最低でも20分は安静になり(FDGが全身に行き渡るため)その後撮影(およそ20分程度)となります。そこからさらに、専門の放射線技師や放射線科医師による画像処理、画像診断が行われます。PETは全身撮影が基本ですのでそのデータは膨大でマンパワーを必要とします。つまり、結果が出るまで受診者一人に対して半日近くかかります。実際はいくつかを並行して行っていますが、大体日勤帯で可能な症例は20症例もあればいいほうだと思います。(限られた検査技師と医師、看護師の被爆も考えなくてはならないのです)ですから、多くの人は受けられないため、通常の胸部レントゲンのようにはいきません。
これは次第に解決されていくとは思いますが、PET画像を画像診断する核医学専門の放射線科医師は未だ少なく、最近になって広まり始めた検査でもあるためその診断は未だグレーゾーンの部分もあるからです。