直腸癌で手術した後、肺に再発した場合の治療方法について教えてください。
さん直腸癌で手術した後、肺に再発した場合の治療方法について教えてください。
私の父ですが(60代)、1年くらい前に直腸がんの手術を受けました。
その時点でのステージは3のaだったかと思います。
その後半年ほど経口の抗がん剤を服用し、それが終わった後は定期的に検査をして病院に通っていました。
そして、つい先日肺に転移が発見されました。片方の肺に5ミリ程度のものが2つあるとのことでした。
先生からはこの後また肺に出てくる可能性もあるかもしれないとのことで、まずは抗がん剤をして、そのあと肺の転移箇所が増えていなければ肺にできている転移した部分を手術しましょうと言われました。
素人ながら、ネットや本で調べていると、転移で肺に見つかった場合はできる限り手術で切除してしまうと書いてあったのですが、
抗がん剤を先にやるよりも、やはり手術を一刻も早くしてしまった方がよいのでしょうか??
直腸がんの手術後に肺転移をした後のよい治療法(または最先端の治療)について何か詳しくご存じの方がいらっしゃいましたら、どうかご回答をお願い致します。
また肺転移箇所を完全に削除できた場合、その後の5年生存率はそのくらいなのでしょうか。完治はあり得るのでしょうか?
よろしくお願い致します。
さん
肺へ転移をきたした場合、大腸癌以外でも積極的に切除を行うように
なってきています。大腸癌の場合、肺切除後の5年生存率は30-60%
といわれております。
(Ike H, et al ; Disease of Colon and Rectm 45: 468-475, 2002)
肺転移巣切除の対象となるのは、原発巣(大腸)が制御されており、
肺以外に転移がなく、肺病変を完全に切除でき、かつ手術および術後の
生活に耐える心肺機能?残肺機能がある、という条件を満たしている場合
のみです。ですから、肺転移をきたした患者の中でも限られた症例のみ
と考えて良いでしょう。
そのような患者において、①手術(肺切除)→化学療法 ②化学療法のみ
のいずれが良い治療成績であるかを比較したデータはありません。肺転移を
とにかく切除するほうが良い、という再現性がある(と思われる)データはない
わけです。
上述の5年生存率30-60%は肺以外に遠隔転移がない事が前提です。
肺を切除したはいいが、すぐに他の場所に出てきてしまった、というのでは何の
ために手術をしたか分からなくなってしまうわけです。ですから、主治医の先生
が化学療法を先に行い、転移が増えなければ手術、という方針を示したのは
理解できる、妥当性がある判断と思います。
一般的に遠隔転移をきたしている場合、血管内に癌細胞が入り込み全身に
回っている状態と考えられます。現在の化学療法では血管内に入った癌細胞
をすべて殺しきる事はできないと考えられています。この考えに寄れば理論上
根治は不可能ということになるのですが、臨床の現場では肺転移の切除を
してから10年以上経過しており、根治したとしか考えられないような患者さんが
少数ながらいらっしゃいます。ですから、根治の可能性が0というわけではなく、
治癒を目指して治療を進めることに意味がないわけではありません。
ただ、そのような幸運なケースは非常に稀ですので、うまく行かなかったときの
挫折感の大きさを思うと、むやみに「がんばれ」とは言えないのが辛いところです。
肺切除の有無にかかわらず化学療法は行うことになると思われますが、大腸癌
再発例に対する化学療法はこの10年で大きく進歩しており、平均生存期間は
再発後4年近くに延びています。治ります、とはいえませんが、化学療法により
延命は可能で、家族で過ごす時間を増やすことは可能なわけです。「治療のため
の延命」にならないよう、家族で過ごす時間、御本人がやり残したことをする時間
を得るための治療、とお考えいただくのがよろしいかと思います。