免疫とガン細胞の関係を教えてください。
さん免疫とガン細胞の関係を教えてください。
お願いします。
さん
免疫系の役割は、
1)外部から入ってきた異物(病原体など)を排除する
2)体内の異常な細胞を破壊する
という2つがあります。1)は顆粒球とリンパ球、2)はNK cell
と呼ばれる細胞が主にその役割を担っています。
1)の中でも、細菌の大部分に対する免疫は顆粒球が担い、
ウィルスや一部の細菌(結核菌など)、真菌(カビ)などに対
する免疫はリンパ球が担う、という分担があります。
また、ウィルスに感染した細胞は、細胞表面にウィルスの構成
分子が出ている事があります。このような感染した細胞はリンパ
球が破壊します。
2)がいわゆる癌免疫に関わる部分で、NK cellは普段から
異常な細胞が出たらそれを破壊して排除しています。その
ため免疫監視とも呼ばれています。
NK cellは異常な細胞を識別する能力を備えているわけ
ですが、細胞がNK cellに識別されず免疫監視から逃れる
性質を獲得すると、癌として増殖し始めるわけです。
普通は増殖する前に排除されているのです。
癌を発症した人はすべて免疫力が低下しているわけでは
なく、その人の癌細胞はその人の免疫監視から逃れて増殖
した、ということです。
しかし、先天性免疫異常、ステロイド、免疫抑制剤、AIDS
などで免疫力が低下している人は、癌に対する免疫監視も
弱まりますので、癌の発生リスクは上昇します。
臓器移植や膠原病などの患者さんはステロイドや免疫抑制
剤を用いる事が多く、そのような患者さんでは感染症のリスク
とともに癌の罹病リスクが上昇します。
AIDSの場合は皮膚に発生するカポジ肉腫が有名ですね。
前述したように癌細胞は免疫系の細胞に「異常」と認識され
なかったために体内で増殖できたわけなので、これを何らかの
手段を用いて免疫系の細胞に認識させ、癌細胞をやっつけ
させようするのが癌の免疫療法です。
体外でリンパ球とがん細胞を培養して(リンパ球を)体内に戻す、
癌細胞の目印になるようなタンパク分子(癌抗原)をリンパ球と
培養して(リンパ球を)体内に戻す、癌抗原を認識を促す細胞
(樹状細胞)とともに体内に注入する、などさまざまな方法が
考えられていますが、手術や放射線治療、化学療法に並びうる
治療法にはなっていないのが現実です。
個人的には癌細胞を認識できなかった免疫系細胞が、後から
癌細胞を認識できるようになることはないだろう、と考えており、
免疫療法という戦略には疑問を持っています。ただ、非常に良い
成績を報告している施設もあり、その医学的評価は未確定と
いうべきでしょう。