2012年12月7日金曜日

進行性の食道がんについて教えてください。

進行性の食道がんについて教えてください。

さん

進行性の食道がんについて教えてください。

母(46歳)が食道がんと診断されました。現在、肺炎をおこしていて病院に入院中ですが、肺炎が治り次第別の大学病院に転院するそうです。ほかの部位に転移しているとは言っていなかったので大丈夫だとは思いますが、「癌」と聞いただけで今すぐ死んでしまうんじゃないかととても不安になります。

そこでお聞きしたいのですが、これは治るものなのでしょうか?どのような手術をするのか、どのくらい生きられるのか、今まで通りの生活に戻ることは可能なのか???

どんな些細なことでもかまいません。分かる方、教えてください。よろしくお願いします。

さん
進行癌ということなので、内視鏡では切除できないものとしてお答えします。

まずは病気が切除可能、つまり手術によってとりきれるか否か、という点が問題になり
ます。大動脈や気管にがっちりくっついた食道癌は手術で取れませんので、抗癌剤と
放射線治療(化学放射線療法)で治療します。2年生存率34%、50%生存期間
9-10ヶ月という報告があります。

切除可能な場合、手術(+術後化学療法)、術前化学療法or化学放射線療法
+手術、化学放射線療法のみ、の3つが選択肢になります。この3者の間にはっきり
した差はないとされ、欧米では化学放射線療法が主な治療戦略になっています。

食道癌は頸部食道(Ce)、胸部食道(Ut, Mt, Lt)、腹部食道(Ea)に分類され、
手術はCeとそれ以外でかなり違います。

頸部食道癌は進展範囲によっては喉頭(のどぼとけ)を残して切除しきることが
困難なため、喉頭を含めた摘出を行います。この場合、発声機能が失われます。
胸部食道に癌が広がってなければ概して開胸手術は不要なのですが、気管に
癌が進展していると胸壁の上の方を切除し、実質的な開胸になります。

胸部食道以下の場合、原則として開胸して?開腹して食道を切除し、胃または
大腸を持ち上げて食物路を再建します。

食道癌の手術は合併症が多く(60-70%)、手術死亡率も1.8%(1989-1998)
と他領域に比べ高いとされます。化学放射線療法で根治にいたった場合、手術を
おこなう意義はない(やっても治療成績が改善しない)ということがわかったため、
私が勤める施設でも化学放射線療法を行い、癌が残るようなら手術、とするケース
が増えてきたように思います。

肺炎を起こしていると言うことですが、これが頸部食道癌のため嚥下障害をきたし
誤嚥性肺炎を起こしているだけならば手術可能かもしれず、上述の3つの選択肢
のなかからいずれかを選ぶ事が出来ます。手術では喉頭温存不能、といわれる
可能性があるかもしれません。
しかし、胸腔内で食道癌が気管に浸潤し穴が開いている状態(気管食道瘻)
になったための肺炎なら切除不能です。その場合、選択肢は化学放射線療法
のみになります。

食道癌の治療成績は欧米より日本の方が優れているとされますが、切除可能例
(StageⅡ、Ⅲ)で5年生存率35-50%と決して良好とはいえません(欧米は
3年生存率40%前後)。

食道癌の治療はいずれの方法をとっても楽ではありません。
とにかく性根をすえて、治ると信じて治療に望む事が大事と思います。
御回復をお祈りしております。

進行性の食道がんについて教えてください。